昭和の戦争を読む著者から / 吉村昭

記録文学

吉村昭

1927-2006

生存者への取材と資料調査を徹底し、確認できた事実だけを抑制した筆で積み上げる記録文学を確立した。戦艦の建造から少年兵の沖縄戦まで、戦争を「事実の細部」で描く。自身の少年期の空襲体験は晩年の回想記に書き残した。

方法
記録文学 — 徹底した取材を文学の筆で定着させる
拠りどころ
生存者取材・実地調査・一次資料
世代
戦中派(少国民世代)
当事者性
非従軍(東京大空襲下の東京で少年期を過ごす)

著者紹介は「何を史料に、どう書くか」の事実記述に限っています。視点の違いは「対で読む」の本の並びでご覧ください。

収録している5冊

戦艦武蔵
吉村昭

戦艦武蔵

新潮文庫|初刊1966年・新潮社

長崎の造船所で、市民の目から隠されて建造された世界最大の戦艦。棕櫚のすだれで岸壁を覆った機密体制から、シブヤン海の沈没までを取材で再構成した記録文学の代表作。

零式戦闘機
吉村昭

零式戦闘機

新潮文庫|初刊1968年・新潮社

零戦の設計から量産、無敵の緒戦、そして消耗と終焉までを、設計者と搭乗員の側から追う。牛車で機体を運んだ日本の生産力の実態など、技術と戦争の関係を事実で描く。

深海の使者
吉村昭

深海の使者

文春文庫 新装版(2011年)|初刊1973年・文藝春秋(文藝春秋読者賞)

制海権を失った日本とドイツを結ぶ手段は潜水艦しかなかった。遣独潜水艦作戦という戦史の隅の事実を掘り起こし、乗員たちの往還を追った異色の記録。

殉国
吉村昭

殉国 陸軍二等兵比嘉真一

文春文庫 新装版(2020年)|初刊1982年・筑摩書房(『陸軍二等兵比嘉真一』)

14歳で沖縄戦を戦った実在の少年兵・比嘉真一の体験を、本人への取材で再構成する。子どもが兵士にされた戦場の実相を、抑制した筆で記録した一冊。

沖縄戦 中級
東京の戦争
吉村昭

東京の戦争

ちくま文庫|初刊2001年・筑摩書房

空襲下の東京で少年期を過ごした著者自身の記憶を書き残した回想記。記録文学の職人が最後に自分の体験を素材にした、銃後の暮らしと死の記録。