昭和の戦争を読む著者から / 大岡昇平

当事者手記

大岡昇平

1909-1988

スタンダール研究者だった35歳で応召し、ミンドロ島で敗走・被俘虜を体験した。その体験を内省的な手記(『俘虜記』)と小説(『野火』)に書き分け、晩年には日米両軍の資料を渉猟して戦史(『レイテ戦記』)へ進んだ。個人の体験から出発して戦争の全体へ迫った書き手。

方法
当事者手記 — 自らの体験を書く
拠りどころ
自身の従軍・俘虜体験、日米両軍の戦史資料
世代
体験世代
当事者性
1944年フィリピン・ミンドロ島に35歳で応召、翌年米軍の俘虜となる

著者紹介は「何を史料に、どう書くか」の事実記述に限っています。視点の違いは「対で読む」の本の並びでご覧ください。

収録している4冊

俘虜記
大岡昇平

俘虜記

新潮文庫|初刊1948年・創元社(横光利一賞)

ミンドロ島で米兵を「撃たなかった」自分はなぜ撃たなかったのか——捕虜となった知識人が、自らの内面を執拗に観察した手記。戦争文学の出発点に置かれる一冊。

野火
大岡昇平

野火

新潮文庫|初出1951年『展望』

敗走する比島戦線で部隊を追われた一等兵が、飢餓の果てに人肉食の淵へ追い込まれていく。体験を素材に、極限の人間を描き切った小説。『レイテ戦記』と対で読むと戦史と個の両極が見える。

レイテ戦記
大岡昇平

レイテ戦記(全4巻)

中公文庫 新版(2018年)|初刊1971年・中央公論社(毎日芸術賞)

日米両軍の資料と生存者の証言を渉猟し、8万余の日本兵が死んだレイテ決戦の全貌を再構成した戦記文学の金字塔。元俘虜の作家が「死者の記録」として書いた、個人による戦史の到達点。

レイテ 専門
ミンドロ島ふたたび
大岡昇平

ミンドロ島ふたたび

中公文庫(改版2016年)|1967年の戦跡再訪をもとにした紀行

戦後22年、生き残った著者がかつての戦場ミンドロ島を再訪する。死んだ戦友と生き残った自分——当事者の「戦後」がどういう時間だったかを伝える慰霊の紀行。